anti, World denied








2

 少し前に、涙を受け止めた展望室も今はお祭り好きなアドリビトムメンバーでどんちゃん騒ぎだ。誕生パーティーなんてそもそもただの名目で、単純に騒ぎたかったのだろう事が目に見える。しかし彼らの様子は楽しそうで、ラザリスや戦争で顔を曇らせていた頃よりも余程晴々と。ひとつだけ、ディセンダーがまだこの場に居ないという事実がほんの少し、寂しいかもしれない。
 こういった場を好まない数名はプレゼントだけ置いてさっさと戻ったり、全員集まるのはいくらなんでもぎゅうぎゅう詰めで無理があったりと、様々な理由もあって顔を見せない者もちらほら。ユーリも本来ならばそちら側で、大量のケーキ作りを終えたのだから部屋に戻って余り物でもつつきたい。だがパーティの中心、穏やかで騒がしい地点に目を向ければ聞こえるはしゃいだ声に誘われてつい足を縫い止めてしまう。クレスやロイド、ガイやティア達に囲まれてルークの笑顔が眩しかった。

 プレゼントをどうしようか。ルークは悩みに悩んで、ユーリと街に降りバザーを巡り渡ってようやく、ボトルシップを買った。瓶の中に詰め込まれた船は、砂の海を堂々と泳いでいる。ルークが持つと大きく見えいっそう立派に見えた。これがどういう意味でルークの心を掴んだのだろうか、別の意味をつい探してしまうのは無駄な深読みかもしれない。
 誕生パーティーまでルークはそのボトルシップを枕元に置き、毎晩楽しそうに眺めていた。そんなに気に入ったのならば別にもうひとつ買ってやろうか? そう言ったが断られてしまう。自分の気持ちが詰まってる物が、誰かの元に残るのっていいな……嬉しそうにこぼす言葉。これも、深読みしてはならないのだろうか。だがそれでもしてしまうのは、知る者の罪なのかもしれない。
 ユーリはパーティーに出す分とは別に、ペンをルークに贈った。アドリビトムで生活している間、リタやフィリアの元で勉強しているのでその時に使ってもらおうと考えて。万年筆程しっかり作られている訳ではないが、まぁちょっとだけ良い物、だ。先にガイやアッシュ達から贈られていたかもしれないが、全て実家にあるのでここでは初めてのプレゼント。
 宝石や絵画、美術品でもない、然程金額のかかっていない物。だがルークは喜び、大切に使う、そう言ってくれただけで満足だ。本当の誕生日には贈れなかったのは残念だが、むしろずらした方が良い選択だったのかもしれない。

 ルークのボトルシップはメルディに渡り、ルークの手元にはヒスイが選んだゴーグルが。大人用なのでぶかぶかだが、サイズがぴったりになる頃には似合うだろ、と太鼓判を押されていた。ルークはその言葉に喜んではしゃぎ、両手でゴーグルを装着して離さない。両手が塞がれていても雛のように口を開ければ、与えてくれる親鳥がそこら中にいて困らないのがまた面白い。ガイやティアが率先して構い、ナタリアの膝に座りながらパーティーを楽しんでいるようだ。
 アニスが持ってくる皿のニンジンスティックやキノコ料理を嫌々食べたり、唐突に始まった誰かの芸に拍手したり。そんな様子をユーリはひとり、離れて見ている。誰かが何歳になった、早く大人になりたい。そんな言葉が会場中を飛び交っているがルークの顔は歪まなかった。ルークの歳を聞かれても、ガイが答えて上手く躱している。それでも我慢出来なくて18! そう高らかに宣言してしまったが、アッシュの事だと勘違いされて終わっていた。気を落とすかと思ったが、別段気にしていない様子。
 大勢の中で屈託なく笑っているルーク。それを良かったと、嬉しく想う気持ちは本当なのに、あの笑顔は心の底からなのだろうかと湧き出る疑いの泉。今までずっと隠し通していたのだから、こういう不信が残るのはしょうがないとして……日常の些細な棘が刺さらないか、勝手な心配をしてしまう。気にし過ぎだ、ルークは笑ってるじゃないか。自分の心をそう落ち着けるが、前に踏み込まなかった時もそうやって自分だけで納得させていた苦い記憶も蘇る。
 バランスが難しいな、と思う。過剰に反応してはいけないと思いつつ、またどこかで、ひとり勝手な事をしないか考えてしまう。その原因の殆どが、解決策がはっきりとしないせいだという事も分かっている。
 船内でこれからの事を話題に出す機会が増えた。エステルやフレンもそのうちガルバンゾに戻ると言っていたし、ユーリの誘拐嫌疑が撤回されればジュディスやレイヴンも戻ると言っている。他のメンバーもオルタ・ビレッジに移り住んだり故郷に帰る予定だったり……。その中で、ライマメンバーはどうするのかさっぱり聞こえてこないのがユーリを焦らせた。
 ガイやナタリアに尋ねても、まだ国から連絡が来ないので待機中と返ってくる。そうやって相手からのアクションを待っていても、意味が無い事はもう分かっていた。そろそろこちらから攻めてもいい頃だ。ユーリはきょろりと会場を見渡し、ある特定の人物が居ない事を確認した。
 中心で笑っているルークの笑顔を胸に焼き付けて、ユーリはそうっと気配を消しその場を抜ける。熱気籠もる会場と打って変わって、エントランスホールまで降りればどこかひんやりと白けた冷たさ。カツンとつま先を鳴らし、剣紐をぎゅっと決意と共に握り締め……ジェイド達が居るだろうライマ部屋を訪ねた。


 数日前に取った行動を再度辿り入ってみれば、ユーリは少々面食らう。ジェイドとアッシュだけかと思っていたが予想に反してこの場にヴァンも居るではないか。重鎮揃い踏みだね、と笑うがふと気が付いた事も。室内は妙に片付いておりそっけなく、トランクや鞄が積まれている。まるで住人が入る前の状態で……ユーリはピンとくるものがあった。

「もしかして帰るつもりなのかよ」
「見ての通りです。元々クーデターはとっくに鎮静していましたし、我々がこれ以上ここに在籍していても意味がありません」
「新しい世界によって預言の否定は明らかになった。今ならば大臣達も、話を聞き入れてくれるかもしれん」

 ユーリはちらり、とアッシュを見る。ルークを守れと言ったのは彼だ、なのにとっとと引き上げるのか? そんなつい責める視線を刺しても、返ってきた返事はつれないものだった。

「兄上側がどうにも出来ない以上、周囲を改善するのが1番解決に近い。教団を解体出来れば新たな資料をが手に入れるかもしれない」
「今まで散々振り回されといて、出来んのかよ? 出来たとしてそりゃ何時まで待てばいい話だ」
「……早くて5年、完全な政教分離ならば数10年はかかるだろうよ」
「その間ルークはここに置いとくんだろうな」
「いえ、一緒に連れ帰りますよ。ファブレ夫人の体調もあまり芳しくありませんし、実験データは国に置いていますので」

 ジェイドの答え方に、ユーリは腕を組んで睨め付ける。母親の体調を持ち出すとは嫌なやり方だ、そんな言い方をされればルークは帰るに決まっているし、自分が引き止める事も難しい。
 そもそもユーリ側が文句を付けたとして、ではどうするのかと問われれば弱いのも強く出れない原因のひとつ。単純に心情として、目の届かない所へ行くのは不安だ。しかしそれはあくまでも此方側の我儘。ならば共にライマへ付いて行くか? それもいいかもしれないが、自分がライマに行ってそれこそどうすると言うのか。身辺を守るだけならば白光騎士団とやら、慰めるならガイやアッシュが居る。それを掻い潜ってルークはガルバンゾに流れてきた事実を知っている以上、場所を変えても意味が無い。
 何よりもアドリビトムの天才を頼らない、それがユーリの不信を煽った。確かに今彼らの忙しさは傍目からも明らかだが、少なくともリタに言えば絶対に知恵も手も貸してくれるはずだ。彼女も不器用ながらルークを可愛がっている場面を、ユーリは知っている。むしろ何故言わなかったと怒られるかもしれない。
 専門外からの素人判断でも、ユーリは自分の意見を口にした。この際個人的な我儘でもぶち撒けてやろうという意気込みで。納得出来ない事をそのまま、流されて遠い場所で勝手に、最悪の結末だけ知らされるだなんて冗談ではない。
 しかしジェイド達は、その感情を手慣れた調子ではたき落とす。嫌になるくらい冷静に。

「アドリビトムに言っちまえよ、出来る手も打たないであんたらは本当にルークを助けたいのか?」
「我々の事がもし漏れたら? 赤い煙しかり、ディセンダーしかり……人は希望の匂いを嗅ぎつければどこからでも湧きますよ」
「オレ達の口がそんなに軽く思われてるとは、心外だねそりゃ」
「悪意も善意も、欲望の前では無関係です。それに他国に知られるならばともかく、不味いのは教団に知られる事ですよ。預言は外れましたがローレライの鍵はまだ結果を出していません、そこを焦点に世間へ触れ回れればどうなると思いますか」

 秘預言を表に出す事を許さない、それが教団だと以前アッシュは言った。なのに世間へ公表し、莫大な富の可能性を示すという事はそれだけ権威が失墜し、かつ起死回生を狙っているという事。手負いの獣を追い詰め過ぎると、窮鼠猫を噛まれるかもしれない。同時にライマ王家への批判も免れないだろう。富の欠片を隠し持っていた事、ルークを子供の姿のまま軟禁していた事。判決を下す大多数の第3者は、表に出された情報のみで判断する事がほとんどだ。それが自国の人間ならば特に国は荒れると予想出来る。
 混乱はそれだけではないだろう、赤い煙の時と同様他国から人が流れ、自分勝手な欲望を求める可能性もあるかもしれない。もしくは外交手段として取引を持ちだされたり、と。少なくともルークの事を外に知られて、メリットが上回るとは思えないのは事実だった。そして自分の周囲が自分の事で争えば、誰よりも傷付くのは当然にルーク本人だ。ユーリはつい溜息を吐いてしまう。

「なら余計、聞こえる場所に置いとくのは不味いだろ」
「ディセンダーが在籍していたと話題のアドリビトムに置いておく事も危険なのです。教団がどういう形で接触してくるのか想像がつきません。依頼人を装って船内に入り込んだり、傭兵として近付く可能性は?」
「怪しい奴はすぐ分かるさ、ここの奴らは全員腕利きだぜ」
「暗殺者が皆殺気を放ち刃物をチラつかせているとでも? ここの半分以上は皆お綺麗過ぎるんですよ、善人の顔をすれば皆武器が届く距離を許すでしょう」
「あんたが言うと説得力あるよな、無駄に」
「ご理解頂けて何よりです」

 アドリビトムメンバーはその心根が綺麗で、真っ直ぐ過ぎる。それは美点でもあり欠点だ。疑う役割を買うメンバーは確かに居るが、数が少ないのも事実。猫を丁寧に被れば船内に入り込む事は恐らく可能だろうし、もしかしたらルークを誘い込んで凶行に及ぶ可能性もある。

「あの子供に関係する人間は少ない方が良い、それが出来なければせめて声を完全に遮断出来る場所でなければなりません。でなければ自ら首を差し出せるよう仕向けるのは容易い事なのです」
「……ファブレの関係か」
「そうだ、口惜しいがな」
「あの子は成長しない分可愛がられ愛されて、同時に憐れまれて生きてきましたので、その心は弱いのです。自分が支えてやる、なんて言葉ひとつで全てを守ったつもりでいましたか?」
「んな事言ってねーだろ」
「そうですかぁ? 最近の貴方の態度を見ていると、つい」

 にっこりと悪びれもなくそんな事を言うジェイドの表情は無駄に生き生きとしている。どうせ随分前から思っていたのだろう、意地が悪い。
 母国で、自分が抵抗すれば両親や周囲の人間に悪影響を及ぼす。その事をルークは十分知っている。だからアドリビトムでジェイド達と合流した後でも死に場所を探したりした。死ぬ事も生きる事も迷っている、そんなルークの背中を押すのはどうあっても周囲だ。そんな甘言を信じこんでしまうくらい、10年という年月は長い。
 今のジェイドの言葉はそっくりそのまま、自分達の研究は信用されていないとルークが思っている事も認めている。だからこそ余計に、ルーク自身の刃を振り下ろさない為にも監視が必要なのだろう。
 軟禁して監視して押し付けて、敵も味方もそんな事ばかりだ。それが必要なのは分かるが、そこからして歪だとユーリは言いたくなる、いや言った。そもそも情と疑心で縛り付けて、関係を築けないのはそれこそ彼らの責ではないか。もっと健全に、家族なのだから信じ合う事に甘えても悪くないと、そう考えられない事が何よりの問題だろう。

「あんたらが腫れ物みたいに慎重に扱うから余計にあいつは悪い方に行っちまうんじゃねーのか、もっと信じてやってもいいはずだろ」
「信じて継承の旅に出たら……誘拐されたがな。貴様は兄上の意地ばかりを見ているから知らんのだろう、その弱さを」
「信じて、失敗した時。貴方は取り戻せますか? ルークの信用ではありませんよ、ルークの命を、です」
「……命は誰にでも、ひとつきりだ。残念ながらな」
「知ってるさ、んな事くらい」

 結局の所、そこに終結してしまう。最大の問題は、失敗出来ない事なのだ。失敗すればどういう形でも、ルークの命は終わる。それが今までから簡単に予想出来てしまう。触れれば感じるやわい肌、その精神もそのまま柔らかい。外に出して育てようとしても危険が多すぎる状況が許さない、八方塞がりだ。
 じゃあ、ルークを帰すのか。自分の手では無理だと思い知って、諦めて離す。出来るだろうかそんな事? ユーリは想像だけして即座に却下する。ライマに帰しても付いて行っても、無駄だと言うのならばもう、自分の主張を通すしかない。まるであの子供のように、だ。

「あんたらがやらねーってんなら、オレの勝手でリタに話を付ける。オレらはオレらで勝手にやるから、あんたらも勝手にそっちでやってくれや。ルークも当然、ライマには帰さねえ。母親には手紙かなんか送らせる」
「貴方の無神経な健気さには涙が出ますね本当に、場合が場合でなければ拍手して差し上げたい程です」
「結局グダグダ言って遅らせてんのはどっちだって話。国で囲ってた頃とは違う、他の奴らだってルークだってな。お前らが二の足踏みすぎてるからオレが代わりにやってやろうってんだろ」
「……確かに、ユーリの言う事も一部頷けるがな」

 アッシュの溜息が綴る同意は重い。彼らは少しライマというくくりに縛られすぎているように見えた。生まれてから今日続くまでの常識で、離れられない場所であるならば当然かもしれないが、今現在は折角別の角度から試行錯誤出来る機会だろうに。生まれという過去から、王位という未来まで。ライマに何もかも縛られている。
 地元の人間がそう思ってしまう事はしょうがない、ユーリだってガルバンゾの下町の皆は特に大事に思っている。だからこそ、外からである自分が強く背中を押すべきだと強く思う。自分の意見もあるが、何よりもルークの為。ガルバンゾで2人暮らしていた記憶を、思い出しながら。
 3人相手に睨み付けて、今日ばかりは退くつもりが無い。それをジェイドは呆れ、アッシュは複雑そうに、ヴァンは何やら深く思案している。だんまり決め込んで展開が進むとは思わないでもらいたい、中途半端な回答ならば自分は思うように動くだけ。それがジェイド達にとってどんな不利益を被ろうと気にするつもりはない。ルークを危険に晒しても、それで未来が掴めるのならばユーリはどんな苦労も厭わないつもりだ。

「船内に置いて貴方がずっと傍で監視するおつもりで?」
「べったりわざとらしく張り付かなくてもルークは騒がしいからな、誰だって気にするだろ特にここのお節介な奴らは。それにガルバンゾの時もなんだかんだ言って、ピンチには駆けつけたぜ」
「確実性の無いセーフティを信用出来る程、我々は愚かではありませんよ」
「だからルークの成長も信じられないって? ルークを見た目だけでガキ扱いするのも大概にしろよ、そうやってあんたらが何時までも子供のつもりで真綿に包んでるからルークは子供のままなんじゃないのか」
「ふむ……耳に痛いが、一理ある」

 ヴァンの小さな呟きに、ジェイドは眼鏡のブリッジを軽く上げる。僅か考えている様子を見せた後、それでもあの相手を舐めた侮る口調で拒絶した。

「貴方がそこまで我が王子に想いを馳せて頂いて大変有り難いのですがね、あくまでも我が国の事ですから。同じギルドに在籍しようと我々の事情に首を突っ込もうとする貴方は余所者です、口出しする権利はありません」
「はん、なんだよその今更なセリフは。ネクロマンサー様が聞いて呆れるぜ」

 全く今更じゃないか。そんな事ユーリはとっくの昔に自覚している。だがそれがどうした、と簡単に返せてしまう事だってジェイドならば気付くはず。けれどそう言ってやんわりとでも明確に拒絶すると言う事は、ユーリを説得するのが面倒になって匙を投げたと言う事だろうか。随分と舐められたものだ。もしくは挑発でもしているつもりか? ならば買ってやると穏便に済まそうとしていたボルテージを上げる。

「部外者って言うけどよ、オレはルークから直々に家来任命されてんだけど」
「口だけならばいくらでも。そもそも貴方はあの子の家来なんて冗談ではないと言ってませんでしたか?」
「オレは遠慮したかったけど、ルークが何度もしつこく言うもんだからそんな気になっちまった。ま、あんたらみたいに何でもしてやってる訳じゃねーが、こっちの方がルークには合ってんじゃないの」
「ほう、主を蔑ろにするような従者は困ります。いざという時は盾になる覚悟もしてもらわなくてはなりませんよ」
「この前盾やった所だけどな、オレ」

 その応酬に、アッシュが場に似合わず笑みを零す。振り向けば普段通り顔を作っているので、どうやらユーリを助けるつもりは無いらしい。あの野郎自分で言っといて。むかっ腹が立ったが、これくらいひとりで押し通せなければそれこそ自分の力なんて及ばないだろう。

「盾になるのは結構ですが、本当に命を落としてもらっては困ります。それ相応の実力と覚悟は常人には成し得ませんが、貴方にそれが可能ですか?」
「やってみせろってんならやってやるぜ」
「ガルバンゾの身内を人質に取られたらどうします? ルークの命と秤にかけて、ルーク以外を見捨てる事が果たして貴方に出来るとは思えないのですが」
「下町の奴らは全員顔見知りだからな、余所者がなんかしようとすりゃすぐ分かる。それに頼れるウチの先生を残してるし、そこらへん心配してねーよ。ってかガルバンゾにもご立派な騎士団連中が居るからな」

 一応、と付け加えて。フレンが戻れば特に安心ではあるが、アドリビトムの活躍でますます忙しくなりそうだなとは言わなかった。その辺りバレてそうだが、ジェイドは特に追求してこない。なんだかわざとらしい態度、ユーリの口から失言が出るのを待っているのだろうか。ねちっこいやり方だ、流石性格が捻くれてる奴は違うな、とユーリは自分を棚に上げて褒めた。
 これは要するに自分の覚悟を見せる、採用試験って訳か。元々覚悟は決めていた、それがはっきりと形になったのはあの涙に触れてから。それまでは自分に出来る事は何かとモヤモヤ考えるだけで足踏みしていた日々、鬱憤も溜まっている。互いに知らないフリをして、波風立てないよう過ごす平穏は終わりだ。

「オレはルークを傷付けるかもしれねーし、泣かせるかもしれない。けどな、裏切る事だけはしない。例えばもし、裏切ったとしても……その意図くらいあんたなら分かるだろ」
「自ら悪役を買うと?」
「そう思うならそう思えばいいさ。あんたらは勝手に降ってくるチャンスを上手く使ってくれりゃいい、それだけだ」

 痛くても苦しめても危険でも、ルークに未来を与えてやれるのならばなんだってしてみせようじゃないか。そうユーリの、普段ならば自分で呆れて恥ずかしくなってしまいそうな言葉でも臆面なく口にした。何時もは行動で語る。だがこの場で言葉が求められているのならばと、はっきり言ってやる。
 しかしその珍しく熱いユーリの覚悟は、ジェイドの蔑む冷たい視線で一蹴された。きっぱりと、まるで戦場で出会った敵のように容赦無く。

「駄目です、全て忘れなさい」

 主が使う言葉は臣下にも影響するらしい。いやもしかしたらルークが影響されたのかもしれない。忘れなさい、その言い方にガルバンゾでひとり、出ていこうとしたルークを思い出す。成る程、主が頑固ならば臣下も頑固者。似たり寄ったりで、笑いが込み上げそうだった。
 しかし腹から湧き上がってきたのは可笑しさよりも、明確な怒りで。ここまで言ってもジェイドは、リスクの大きさばかりを見ているその愚かさ。どちらに重心を置くのは確かに人それぞれであるのは勿論だが、理のある意見すら捨ててしまうのならばそれはもうただの感情だ、ルークの為ではない。
 別角度から見ればあのジェイドが、ポッと出の人間に長年積み重ねてきた指針を奪われるのが我慢ならない……とも考えられる。が、ジェイドがそんな風に振り回されていると思えばそちらの方が愉快じゃないか、馬鹿馬鹿しい。

 ユーリは瞬間、吐き捨てるように鼻で笑い、それから左手の剣紐をくんっと跳ね上げる。戦闘前のように柄を受け止め、鞘を投げ捨てた。晒した刀身が電灯の元ギラリと輝く。しっくりくる手の感触、刹那の隙間で部屋に緊張が走る。
 ユーリはそれをデモンストレーションに一閃、それから己の背中に流れる黒髪をまとめて掴み、一息で切り捨てた。右手で束になる紫黒の髪は思ったより長く、けれど思いっきり床に叩きつける。ぶわりと散る黒い糸はぱらぱらと、ユーリの視界中に飛び散った。目の前のジェイドは微動だにしないが瞳を開き驚いている様子。それにしてやったり、と少しだけ胸がすく。

「あんたがぐちぐちうるさいから、下僕の証を立ててやったぜ。この瞬間から、オレはガルバンゾのユーリじゃなくてルークのユーリだ。これでいいだろ」
「……髪なんてまた伸びますが」
「じゃあ次は目を潰してみせようか、それとも手足かよ? どこでもいいぜ、どこでもくれてやる」

 目が無くなっても手足がある、手足が無くなってもまだ言葉がある。四肢が欲しいならお望み通り、忠誠が欲しいってなら今までの行動で十分健気な程見せているだろう。それでもまだ欲しいなら、相応のものを出してもらわなくては。
 ルークが起こす癇癪のように、ユーリは何をどう言われてもジェイドの提案に頷くつもりはない。そして自分の意見を押し通すつもりだ。その代償が髪だの目だの手足だの、幾らでも支払ってやる。最初からユーリの意見は変わってない、ルークの未来の可能性。たったそれだけだ。

 落ちて床に散らばる紫黒の線、ジェイドはそれを煩わしそうに見つめた後顔を上げた。珍しく眉間を歪め、それからアッシュとヴァンをちらりと。彼らは苦笑しながらも頷く。折角片付けたのにこれ以上部屋を汚されてはかなわん、アッシュの声色は面白そうだった。
 ジェイドは溜息を長く、爪先をカツンと鳴らしてから呆れ返った表情で負けを認めた。

「馬鹿ですね、そんな事をしたら貴方はただの役立たずですよ」
「それくらいの覚悟はあるってこった」
「やれやれ……。いつの間にそんな熱血になったのやら」
「んなつもりはねーが、オレもこのギルドに毒されちまったのかもな」
「救世主たるディセンダーの光ですか……。貴方が浴びては灰になってしまうのでは?」
「そっくりそのまんま、あんたに返してやるぜ。それ」

 肩を竦めればさらりと、髪が頬に触れる感触。ここまで短くしたのは本当に久しぶりで、馴染んだ柄と違いちょっとしっくりこないのが面白い。手で触れてみれば、ざんばらに斜めな切り跡。こりゃ後で誰かに切りそろえてもらわなきゃうっとおしいな、出てくる感想はその程度だった。




***

 アンジュに尋ねてみれば、どうやらジェイド達は脱退してから帰国するつもりだったらしい。ユーリの説得で脱退は取り止めたが、ルークとガイを残して他の皆が帰国する予定は変更しない事となった。折角誕生会をした所で、言ってくれれば送別会も合わせてやったのに、と一部寂しそうな不満の声も。

 数日後、甲板にはアッシュ達を見送るアドリビトムの面々。当然ルークが1番不満そうな顔で名残惜しんでいる。帰る予定だったのを取り止めたその理由、ルークには言わないでくれと口止めを頼んでおいたのを一応聞いてくれたようだ。正直ジェイドは言うかと思っていた、置き土産のような意地悪のつもりで。
 アッシュ、ティア、ナタリア、アニス、ジェイド、ヴァン……と順番に別れの抱擁をぎゅうっと強く。ナタリアは勇気付けるように気高い表情と言葉で、ティアとアニスは弟を心配するような顔で。待たせていた馬車に乗り込む背中を、ルークは縋る瞳でじっと見ている。
 髪を切り揃え、肩にも付かなくなった短さが風に揺れた。ユーリが後方で見守っていると、アッシュが普段通り生真面目で硬そうな声を掛けてくる。あれだけ大口を叩いて説得したのだから、双子の弟としてはそりゃ一言言っておきたいだろう。

「以前にも言ったと思うが……何があっても兄上を守りやがれ。もし少しでも傷付けたら容赦無く殴るからそのつもりでいろよ」
「へいへい、わーってますって」
「定時連絡は欠かさずしろよ、手紙も2日に1通は必ずだ。食事はおやつと合わせて4食が限度だからな、それ以上はやるな。風呂はきちんと肩まで浸かって100まで数えさせろ」
「ペットの飼育か! もうさっさと行けっての」
「ふん。貴様の事を信頼するつもりはないが……信用はしている。切り開いてみせろ、そのふてぶてしい我儘でな」
「オレの我儘は主に似たんだよ」

 そう返せば苦々しく笑い、踵を返して去っていく。背中はしゃんと伸び堂々としている。王族としての責任を自覚している、気高さと高潔さはユーリから見ても頼もしい。横槍さえなければライマの未来はもっと安泰だったろうに、惜しい事だ。
 どう説得するのか想像もつかないが、アッシュならば必ずやり遂げるだろう。どれだけ掛かるのか分からないが、それまで自分がルークを守ればいいだけだ。当然、自分ひとりだけではないと知っているのだから余計。
 ルークがヴァンに頭を撫でられている様子が見える。まるで父親と息子のようで少し微笑ましい。ヴァンに対しては全幅の信頼を寄せているルーク。目指すはあれくらいだな、とユーリは目標を高目に設定した。ふと気が付くと、傍にジェイドが。何時も通り薄っすら笑い、本心を綺麗に偽装している胡散臭さ。眼鏡の奥に隠したものが何時か知れる日が来るとは、正直思えない。ジェイドは潜めた声で静かに忠告をした。

「ルークとガイは付き合いが長いですから、決してボロは出さないでしょう。しかし浅い貴方相手ならばルークは尻尾を出すかもしれません。……素直に言う事を聞いている彼は絶対に裏で何か企んでいます、片時も目を離さないでください」
「わーってる、依頼の時みたいなやつだろ? オレも随分と舐められたもんだよなあれは」
「頼みますよ。ルークはまだ、隠している事があると思いますので」
「そこら辺はあんたらが聞き出してくんねーかな……ってルークが言う訳ないか」
「ご明察の通り。では、後をよろしくお願いします」

 ペコリと、丁寧に頭を軽く下げて。ジェイドという人間を知っていると礼をされれば余計に含みを感じてしまうので止めてもらいたい。頭を上げた後の表情は笑みを消し、厳しさが溢れる顔だった。そのままくるりと背中を見せ、行ってしまう。
 結局ジェイドの心の中は分からなかった。別に探ろうとは思わないが、情報を小出しにせず全部言っておいてくれとは思う。ああいう裏で手を回す人間と、どうしてこうも縁があるのかユーリは苦笑した。

 小さくなっていく馬車を、ずっと、見えなくなるまでルークは見送る。他の皆は空気を読んで先に戻っている、ガイはウインクひとつでユーリの肩を叩き、爽やかに戻っていった。……ユーリが説得してここにルークを残した事を、どう思っているのだろうか。同じように、ルークの未来の為ならばどんな苦難も乗り越えてみせると思ってくれていたら助かるのだが。ガイはちょっとばかり出来過ぎているので、時々反応に困る。ユーリが悩んで苦しんだ様々を、既に通ってきた先輩のような顔で迎えられると恥ずかしいというかなんというか。まあ頼りになる事は確かだ。
 振り返れば、ルークがまるい瞳を見上げている。朱金の髪は太陽の光をきらきら反射させて、少し焼け始めた肌。最初に会った頃と見た目も印象も、随分変わったと思う。それを言葉にするのは難し過ぎるので、ユーリは口を噤んでしゃがみ込み視線を合わせて頭を撫でてやった。
 乱暴に、わしゃわしゃと頭が振れる程かき混ぜればルークの眉根は歪んで、でも少し嬉しそう。やわい頬の輪郭を辿れば、猫のように気持ち良さそうに瞑る瞼。もちっとした感触が心地良く、ユーリもついつい時間を忘れてやってしまう。しかしそうっと開かれて線引く翠色は、どこか不安そうな色を宿していた。
 おずおずと、恐れるような声色で尋ねる。確認するつもりで聞いてくるのに、本当だったら怖いと思っているのがありありと分かった。

「……もしかして、ユーリがなんかしたのか?」
「ん、何がだよ」
「だって、本当はみんなでライマに帰る予定だったんだけどさ。突然俺とガイだけ残れって、言われて」
「国に帰ったってルークが出来る事なんかあるか?」
「あ、あるっての! 母上の様子とか、検診とか、じ、実験の手伝いとか……」
「手紙で結果を送ればいいだろ、母親にもな。というか前に一時帰国した時もマジで会わなかったのかよ?」
「いや、ちょっとは顔出した。こっちの事は心配するなって言われたし」
「んじゃ問題ねーな。リタに話付けてるし、お前はこっちで診てもらえ」
「……それも、さ。俺の件って門外不出なんだよな。ジェイドが話したって未だに信じらんねーんだけど」
「お前文句ばっかだな! いいじゃねーか、もしかしたら宝珠取れるかもしれないんだぜ?」
「だってよ、そんな上手くいくかなぁ」

 10年分の重みは簡単に頷いてくれなかった。分かっていた事だが、ネガティブに入るとルークは結構面倒臭い。ユーリはそっと抱き付き、余る両手を背中に回してポンポンと叩いてやる。

「心配すんな。お前は諦めなけりゃいいんだよ」
「ユーリ……」
「その分苦労も努力もしてもらうが、それくらいはいいだろ。新しい家来として、オレの手も貸してやる」
「家来ってお前……?」

 驚いて瞳をまるく広げる。そういえば肝心の本人にまだ言ってないのだった、ユーリは自分のうっかりを笑ってしまう。

「正式にお前の家来になったんだよ。ジェイドにもアッシュにも許可取ったぜ」
「ええ? そんな、ずっとやだって言ってたじゃん」
「別に嫌だって言った事は無かったと思うけど? いいじゃねーか下僕がひとり増えたって事で」
「でも、本当は俺にそんな権限ねーし、どうせ就くならアッシュの下の方がいいと思うけど」
「いやそんな真剣に考えなくてもいーから。別にルークから給料貰おうとか思ってないしな」
「けど先に父上にお願いしないと……」
「だから、オレは国だの家だの通してお前の家来になる訳じゃない。個人的に勝手に、ルークの家来になるんだって」

 あれだけ自分で言っておいて、いざ此方から告げれば戸惑うとは可笑しなものだ。ユーリはぶにーっとほっぺたを挟み込み、主をぶさいくに可愛がる。嫌そうにぶるぶる振り乱して剥がされるが、代わりに腰をしっかり抱きしめて離さない。手の甲に触れるさらさらした朱金の感触、自分には無くなってもこの子供に有れば満足だ。
 風に吹かれる髪を手櫛で直してやり、視線を合わせればルークの表情はやっぱり困惑がいっぱいだった。それが面白くって、何度でも笑ってしまう。笑われた事にムッとして、ルークは唇を尖らせた。

「ユーリはタダ働きしたいのか?」
「いいや? 真っ平ごめんだね」
「お、俺はなんにも持ってないぞ……」
「ルークが言ったんだろ、お前に仕える事自体が給料だって」
「そりゃ言ったけど、でもそんなの本気でっ」
「オレが良いって言ってんだから良いんだよ。って事でご主人様、これからよろしくな?」
「で、でも俺、ユーリにしてもらってばっかなのに……」
「じゃー主人として家来のお願い聞いてくれよ、それが給料だ」
「俺がしてやれる事なんてほとんど無いんだけど……お願いって?」
「オレがルークの家来になるっていうお願いだ、これでいい」
「だからー! そんなのユーリの得になんねーってば!」
「したい事をやり通すのがオレの我儘で得なんだっての、これでいいじゃねーか」
「なんだよそれー……」

 まだウダウダ言い連ねるルークを、抱き上げて黙らせる。軽い体は簡単にユーリの腕の中に閉じ込められ慌てていた。間近の頬同士をぎゅっと押し付けて、普段通りに微笑んでやればルークは微妙な顔を返す。失礼な奴め。
 それからそっと、おずおずと横髪に触れてくる。以前はよくここを手綱代わりにされて引っ張られたものだが、今ではユーリの顎を少し飛び出すくらいの長さしかない。後ろもスースーして頭が軽い、うなじがちょっと寒いくらいだ。髪を整えてくれたのはフレン、昔お互いの髪を切っていたのを懐かしんで快く引き受けてくれた。そしてその時、ルークへ従事する事も。
 騎士団を抜けたのに、誰かの下に収まるなんて我儘勝手だと分かっているが、これもケジメのひとつとしてフレンにはきちんと言っておいた。まあ従事すると言っても、そうガチガチに固まった仕事をするつもりはないが。今まで通りルークの傍に居て世話をする。今まで通りルークの未来を探ってやる。なんら変わりない。
 ガルバンゾに残してきた下町の皆やラピード達の事は多少引っかかるが、自分が居なければどうにもならないような面々ではない。折を見て会いに行けばいいし、その辺りはどうとでもなる。ルークも止めたりなんてしないだろう。そしてもし、本当にルークから宝珠が取り出せて成長し、ライマに帰る事になったら。その時はまたその時だ。喜ばしい悩みに頭を使う事が出来るのなら、歓迎しようじゃないか。

 ルークは今自分が触っている髪の長さが、夢でも幻でもない事をじっくり確かめている。小さな指の先で、後頭部を何度も梳いてくすぐったい。じーっと睨む目付きで見つめた後は体を引いて全体を。と言ってもユーリが掴まえ抱き上げているのだから範囲は限られているが。
 誰かに髪を梳いてもらう事は滅多に無いのだが、こうやって受けてみると案外気持ち良いのだなと感想が漏れる。そういえばルークも朝、ガイに髪を整えてもらっている時は大人しくしていた。あの場面は絵画のようにしっくりときて、今のユーリは正直ちょっとだけ羨ましいと思う。
 自分の主がこうやって自分だけを見て、真剣な表情で髪に触れてくれるならば尚更。また伸ばすのもいいかもしれない、その時はルークに髪を整えてもらおう。そんなささやかな計画を楽しみにたてる。
 家来が勝手にスケジュールを作っていると、短い髪が現実だとやっと理解した主は眉を下げて少し悲しそうな瞳で問う。そんな顔をさせたくて切った訳ではないので、ユーリは眉間の皺をぐりぐりと伸ばしてやった。

「契約完了だからな? こればっかりは頷いてもらうぜ」
「うー……ユーリ本気か?」
「オレは何時でも本気だけどね。んな事よりほら、ルーク様?」
「……分かった、分かったよ! もう好きにしろよばか!」
「よしよし、最初から素直にそー言やいいんだよ」
「もしかしてさ、髪切ったのも……それが理由なのか?」
「髪は毎回ルークが引っ張り回してくれるから切っただけだって」
「う、嘘ばっかり」
「お前に嘘付いた事なんてねーだろ、ったく」

 誤魔化してばっかりのご主人様に言われたくねーな、そう嫌味を言えばルークは気まずそうに黙る。自覚は一応あるらしい、それを止めると言わない辺りまったく世話の焼ける事だ。ぎゅうっと強めに抱きしめて、ユーリはニカッと笑う。では早速家来として、ご主人様の斜めなご機嫌を直させていただきましょうか。宣言すればルークはぱちくり瞳を丸めて、今日はそんな表情ばかり。

「おら、遊んでやるよ家来らしくな! ほれほれほれっ」
「うわあっ!? わ、わああああ目がまわるうぅ〜〜っ!」

 久しぶりに、ルークをぐるぐるっと回して遊んでやる。流石に今回は手足を持ったりしない、バンエルティア号の甲板なんて目立つ場所でやったら今度は誰が怒りに来るか分かったものではないので。抱きしめて腕に閉じ込めたまま、ぐるぐるっと。遠心力の関係でスピードが上がり、自分も目を回しそうだ。けれどルークの叫び声が段々笑い声に変わっていくものだから、止め時を見失う。
 自分も面白可笑しくなってきて、2人そろって甲板で笑っていると通りすがりのメンバーから怪訝な瞳で見られてしまった。ユーリのせいだから! と早速ルークから、家来が通る道であろう罪を被せられてユーリは苦笑しながらにこやかに、ほっぺたをぎゅーっと押し潰してやった。






  


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