ユーリ・ローウェルには秘密がある








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 ふかふかのシーツに包まれ、ぬるま湯のような温度が温かい。眠りの誘惑から抜け出せそうにないルークの鼻に、ふと香る微かな匂い。これは何だったか、確か最近嗅いだ匂いだったはず……。考えようにも、睡魔が手を離してくれない。それに何より、髪をふんわりと梳かれる感触が気持ちいい。子供の頃に母親から受けたような、胸が苦しくなりそうな懐かしさ。分からない、だが目を開けてこの心地よさが失われてしまうには余りに勿体無い気がする。だからルークはもう少し、この時間を味わうべく瞼を完全に閉じた。



 それはルークがまた暇つぶしと称して船内散策中でぶらついていた時だ、『リネン室』と書かれたプレートが貼ってある部屋を開けた。普段ならばシーツの山など興味の欠片も抱かないが、ここ最近はお気に入りになりつつある探偵小説を読んでは寝不足気味なのだ。遅く眠るので起床もどんどんずれ込むのだが、いつまでも惰眠を貪っているとティアに叩き起こされる事も学習済み。今日もまだ眠っていたい所を無理矢理部屋から叩きだされたばかりで、実の所まだ眠い。なので真っ白い布地が、眠りの楽園へ誘う手に見えたのだ。悪魔の誘惑に負けるのは人間の業、アンジュあたりならばそんな説教をしそうである。

 今日か明日の分なのか、きちんと畳まれて目立つように大きな籠に入れられていた。籠の位置も低く、少し体裁を整えれば簡易ソファかはたまた布団の代わりにしてくれと言っているよう。ルークは一度そう思いつけば実行したくて堪らなくなり、他に誰も居ないのをいいことにせっせとシーツを崩して整え、寝そべるに丁度いい塩梅に仕上げた。ベッドメイキング完了! とリリス達が聞けば秘奥義が飛んできそうな決め台詞を吐いて、ルークはご機嫌にぽふりと文字通りシーツの海に沈んだ。



 ……そこまでの事は覚えていた、あれからどれだけの時間が過ぎたのか分からない。だがそんなに経っていないと思う、思いたい。眠りの園で遊ぶルークの傍から、小さな物音。それに呼ばれたような気はしたが、ふわふわした心地を捨てるのが惜しく微睡む。途切れることなく続く音に、うっすらと薄目を開けてみれば目の前の真っ白なシーツに鮮やかな色彩が散らばる。まるでキャンバスに絵の具が載ってるみたいで、少し面白い。
 しかし記憶が確かならばここはリネン室であって、絵描きが好みそうな公園でも題材があるような場所ではない。はて、考えなおして目をもう少し開ける。それは絵の具ではなく、花だった。バラ、百合、コスモス、タンポポ、菊……。季節も種類もバラバラで、知識ある者が見れば困惑が激しいだろう。しかし詳しくない者からすれば感想としては単純に綺麗で、特に好いている訳ではないルークからすればまさしく花だな……程度だった。よく見れば飴玉やマシュマロといった菓子類もあり、でっかい飴などは頭に落ちれば痛そうだ。
 そこまで見れば雲掛かったルークの頭も覚醒し始める、最近船内を騒がせる『ばら撒き魔』だ。今ぽとり、と目の前を一つ落ちてきた。まごうことなき現行犯、ルークは飛び起きたい衝動を必死に抑えた。慌てては逃げられてしまうかもしれない、昨夜読んだばかりの小説の一文を思い出す。
 そしてふと気付く、自分の隣に誰か居る。シーツが沈んでいる重みと、なんとなく背中が温かい。順当に考えてこの人物が犯人だろう、元より船内の事件なのだから外部犯は疑っていない。しかしこれだけ議論に上がり捜索隊まで組まれているにもかかわらず、未だ捕まっていないのだ。相当な知能犯だと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。これで犯人を捕まえたとなればヴァン達に良い報告ができるに違いない、ルークは心の中でにんまり笑った。

 取り敢えず顔を見れば、例え逃げられたとしてもどうとでもなる。しかし相手はどうやら背中側に居るらしい、どうやって気付かれずに振り向くか……。暫く考えて、無難に寝転がる事に決めた。出来るだけ自然に、それっぽく……。ころんと反対側に一気に寝返り、スゥスゥとらしく呼吸する。少しわざとらしかっただろうか? 緊張してじっと目を瞑るが相手が動いた様子はない。心の中でガッツポーズをとった。
 反対を向いた事で、犯人とはかなり近距離になったらしい。自分で吐く息が目の前でぶつかって、付近に溜まっていく気配。すぐ目の前に居る、足に至っては上に被さっている始末。正直近すぎたかもしれない、だがここで退けばもっと怪しまれるだろう。ルークはここまできたんだからやってやるぜと、自分で自分を奮い立たせた。

 すうっと少しづつ目を開ける。しかし位置が悪かったのか、目の前は暗い。いや暗いというより黒かった、焦点を合わせればそれは服の色。片目をパッチリ開けてよく見れば、肌色と黒色。どうやら近すぎて逆効果だったようだ。……正直これではよく分からない、ええい儘よとルークは首をほんの少し曲げてその姿を見た。

 意外な人物だ、頭に浮かんだのはまずそれ。しかしそんな事はすぐに隅にやってしまった。
 黒衣に身を包み、髪も黒く長い。ルークが一人ぶらついていると何時も何処からともなく現れて、神経を逆なでしては勝手に去っていく……ユーリ・ローウェル。苦心して設えたベッドモドキに、沿うように身体を沈めている。なにより目を引いたのはその表情で、穏やかで優しい顔だった。そう、エステルやフレン達と居る時のような……。ルークは勝手に心臓が音量を増しているのに気付いた、こんなに音を立てては気付かれてしまうかもしれない。
 ユーリはルークの朱金を手に取り、ふーっと息を吹きかけては遊ばせていた。そんなことをして一体何が楽しいのかルークには理解できないが、先述のとおり表情は悪くない。

 ふぅふぅとユーリが髪を遊ぶたびに、周りに花がぽとぽと落ちてくる。何時からやっていたのだろうか、寝転がった隙間にもそれが落ちていて結構な量だ。
 犯人はユーリだったのか、落ち着かない思考の中考える。そう考えれば、と以前甲板掃除の時のことを思い出す。あの時も最後に自分がゴミを捨ててくると言って、後をユーリに任せたのだ。それに証拠物件が多く目撃された場所は確か、ライマ部屋前廊下と食堂前廊下。ルークとユーリ、お互いの行動範囲でかち合う場所だ。
 確信を強める、もう犯人であるには間違いないだろう。甘党で普段から自分で菓子を作ってるクセに、どうしてそれをばらまく真似をするのだろうか。疑問は尽きないが今は逮捕だ、現行犯逮捕。どうせ犯人は分かったんだから、逃げられてもいいか。そんな安直な理由でルークはもう少し首を曲げて、ユーリの顔を窺った。
 するとさっきまで煩かったはずのルークの心臓は、今度は一転固まってしまった。ユーリは何か思い出しているのか、ふっと笑う顔を目撃する。ガシャン! とガラスが割れた音が響いた気がした、心臓の中で。
 その顔は優しくて、暖かそうで――。端正であり中性的な面立ちのユーリがそんな表情を見せれば、どんな女性でも一撃で沈みそうだ。そんな事を考えたルークは、何故か異様に腹が立った。だって自分と会う時にこんな顔を見せた事なんて一度も無かったのだ、何故こんな風に今微笑むのか。ムカツク、っざけんな、ロン毛野郎、大罪人のクセに、ぶつくさと心の中で不満が募る。
 あまりにも腹が立ったので、ルークは仕返しをする事に決めた。どんな仕返しをするだとか、詳しくは考えていない。思い付くまま気の向くまま、だ。へにゃへにゃ笑って油断慢心なユーリに、打って出たのだった。

「だりゃあ!」
「……っ!」

 がばり、手を広げて正面のユーリにダイブ。全身で押さえつけるように、ルークはユーリに思い切り抱きついた。逃がすまい、と腕に力を込めればカツンカツンと頭上に当たる何か。

「いてっ」
「あ、…悪い」

 大きなビー玉くらいの飴玉が、ルークの後頭部に直撃した。それだけではない、目を開ければ菓子が雨粒のように降っている。コツン、とまたいくつか当たった。すごく痛い訳では無いが、全く痛くない訳でもない。むしろイラッときた。

「だーっ! 何なんだよ! こら大罪人、これお前がやってんだろうが! さっさと止めろよ!」
「あー……。悪いなこれ、自分じゃ止められないんだ」
「はぁ?」

 言っている合間にもぼとぼと落ちて二人を攻撃してくる菓子達。せめて花なら痛くないものを、何故よりにもよって痛そうな飴玉ばかり。コツンと当たる飴玉、それを傘のように上げてユーリの腕が守るように遮る。下敷きになったユーリが腕を上げては、まるで抱きしめているようではないか。その上に乗るルークの体は途端に落ち着かなくなり、顔全体が熱くなった。しかしここで離せば逃げられてしまうかも……いや、だから顔は見たのだから逃げれらても構わない訳で……! 誰に対しての言い訳なのか、自分でも分からない言い訳をつらつらと弁明するのだが声に出していないのだから意味も無い。しかし背中にまだぽとぽと落ちてくるクッキーがうっとおしい、これでチョコなんて付いたら怒られるのは此方だと言うのに。

「だー! うぜぇっ!」

 ばさりと手近なシーツを取り広げて引っ被る、落ちてくる感触は防げないがこれで服が汚れる事は無さそうだ。だがふと気付く、こんな風にシーツを全身被せてしまえば、下に敷いてるユーリごと二人の空間。ルークは全く動かないユーリを押しつぶしてしまったのか? と見れば何故かユーリは横を向いて片手で目を覆っていた。

「おい、んだよ。……どっか痛いとこ当たったか?」
「あー……いやその、なんだ。……取り敢えず退いてくれるか、重い」
「逃げるってんならそーはいかねーぞ!」
「今更逃げないっての、いいから退け」

 その声色が本当にぐったりした印象を受けたので、ルークは大人しく体をずらして退いた。そうすればシーツ越しに当たっていた菓子類の固い感触は止み、ぱさりと軽い物が当たる気配。恐らくまた花が降り始めたのだろう、それにしたって花でも菓子でもさっきから止みそうにない。
 汚れる心配は無くなったが何時また菓子にチェンジするのか分からない、ルークはシーツを取らずに狭い空間の中犯人を追い詰めた。

「なぁ、これ大罪人がやってるんだよな? なんでこんなに降ってんだよ」
「……特異体質なんだよ、勝手に降ってくるんだ」
「勝手に? どこから! こんな大量の花と菓子!」
「オレだって知らねぇよ、コントロール出来るんなら好きな時に菓子だけ出すに決まってんだろ」
「それもそうだな……花なんて食えねーし。昔からなのか、これ?」
「かなりガキの頃はもっと降ってた、それこそ2種類だけじゃなく色々な。野菜とかフォークとか……」
「危なくね、それ?」

 白菜やスイカのような固く重い物が落ちてくれば危険で仕方がないだろう、刃物なんてそれこそ論外だ。コントロールさえ出来れば食糧危機を救う英雄になれたかもしれないが。

「けどある時ぷっつり止んで……、それ以来この船に来るまで忘れてたんだけどな」
「止んだって……何でだ? 同じ事すればこれも止むんじゃねーのか?」
「親が死んで一人になった時からなんだよ、降らなくなったのは」
「あ……、悪い……」
「かまいやしねーよ、昔の話だ」
「お、おう」
「オレも困ってんだ、……気が付いたら廊下に花やら菓子が落ちてて騒ぎになって」
「そうなのか……」

 はぁ、と疲れた声で吐く溜息が心底参っているようで、ルークは胸がざわついた。何時も余裕ぶって此方をからかってくる相手が、こんな弱った姿を見せるだなんて。なんとかしてやりたい、だなんて自然に湧いてでた気持ちが確かにあった。「弱き者を助けるのは探偵の仕事」少年向け探偵小説の一文を思い出す、俄然やる気が復活してきたのだった。

「よし! 俺がなんとかしてやる、感謝しろよ!」
「……お坊ちゃま、オレは割りと本気で困ってるんで遊び相手なら他を当たってくれませんかね」
「んだとゴラァ! 遊びじゃねーぞ、本気だっつの!」

 本気と取られていないようで、ルークは悔しくてユーリの腹を叩いた。鍛えられた腹筋が反発して、いい音が鳴らないのが余計腹立たしい。やめろこら、と下からやる気なさげな声が掛かって、上からまた飴がコツンと当たった。

「はぁ、さいでっか。……んじゃどーしてくれんだ探偵さん」
「そうだなー、とりあえずリタかハロルドに見せるか」
「解剖されそうだから止めてくれ、マジで」
「確かにリタはともかくハロルドはマジでやりそうだな……。ん〜、それじゃあなぁ」
「……取り敢えず今は黙っといてくれるだけでいい」
「何でだよ、困ってんだろ?」
「またぱったり降らなくなるかもしんないしな。さっきも言ったけど、何時降るのか自分でも分かってないんだ。変に期待されたら降らなくなりました〜とか、居たたまれないだろ……」
「ええ〜、そんなもんかぁ?」
「そんなモンなんだよ、頼むから秘密にしといてくれ」
「……ひ、秘密か。おお、し、仕方ねーな!」

 秘密、という響きが特別に感じられて、ルークはまだ色々言い足りない言葉達を閉まった。にんまりと勝手に口角が緩み、ふへへと微妙な笑いが漏れる。胡散臭げに見てくるユーリはこの際無視で、妙に心躍る心地に浮ついた。

 いい加減暑苦しいのか、ユーリは体を起こしてシーツを跳ね除けた。二人の空間から出た外の景色は酷いもので、花と菓子で周り半径1m内が埋め尽くされている。それでも落下が止んでいるのは幸いだった。菓子類は個別包装された物のみだったが、問題は花の花粉だ。ベッド代わりにしていたシーツは恐らく全滅だろう、内側は無事かもしれないが。これはリリス達に大目玉を食らいそうだ、早急になんとかせねば無事では済まない。

「……取り敢えず落ちてるの全部拾って、掃除機借りてきて……洗濯だな」
「めんどくせぇ!」
「助けてくれるんだろ? 探偵さん」
「〜〜! 仕方ねーな! ったく!」
「集めとくから、ゴミ袋と掃除用具持ってきてくれるか」
「俺がかよ、お前が降らせてるんだからお前が行けっつーの!」
「行ってる途中で降ったら意味ないだろ。それともこの現場を誰かに見つかってお前、一人で言い訳できるか?」
「…………ったく、心の底から感謝しろよ」
「アリガトーゴザイマス」
「むっかつく!」

 むきー! と頭を掻き毟るルークだが、確かにここで一人待っている間に見つかれば大変な事になるだろう。流石にこれだけ積もっていると、来たらあったんだ! という言い訳も苦しいかもしれない。怒られるのも言い訳も得意でないのは自分でも理解しているので、ルークは諦めた。そんな時ユーリがぽつりと零す。

「……マジで悪いな、こんな面倒事一人で始末するつもりだったんだけど」
「べ、……別に! ふん、勝手に落ちてくんだろ、お前悪くねーじゃん」
「せめてコントロールできりゃ良かったんだけどな」
「あーもう、うぜー! うじうじしてんなよ、調子狂う! いいじゃねーか、花が降りゃ女共もウィルも喜ぶし、食える菓子ならガキも嬉しい! 良い事ずくめだろ!」
「……そんな単純ならオレも良かったんだけど」

 横向くユーリの顔には複雑な哀愁が漂っていて、こんな時でなければ絵になりそうな程。そんな顔を見たルークの胸は不自然にきゅうっとなり、また訳が分からない苦しみと動悸が駆けまわる。知らない顔でもこんな悲しげな表情は好きになれそうにない、どうせなら笑った顔がいい。そう、起きる前に見せていたあの笑顔が……。すると今度は頭に血が昇ったようにカーッと顔が熱くなり、手が勝手に汗を滲ませる。動悸を自分で誤魔化すように、ルークはビシっと指先をユーリに突き付けて言った。

「出せないより出せる方がいいだろ、少なくとも俺はすげーって思うぞ!」
「…そりゃどーも」
「俺が手伝ってやるってんだから、なんとかなるっつーの!」
「まぁ、期待してるわ」
「てめー、疑ってんな!? 声に出てんだよ!」
「疑ってない、疑ってないって! それよりあんま声出すと人が来るぜ、ほら早く持ってきてくれ」
「ったく、なんっかムカツクな……」

 ぶつぶつと文句を言いながら出て行こうとするルークの背は、思い出したように振り向いた。

「それちゃんと集めとけよユーリ!」
「……………………おう」



 ぷしゅ、と機械音。扉が閉まれば後に残されるのは沈黙と花と菓子。ボケッと立つユーリを中心に軽く絨毯のようになっているその場所に、大量の花と菓子がドサドサと一気に落ちてくる。足首まで埋まってしまい、これはゴミ袋1枚では足りないかもしれないなとユーリはぼんやり考えた。集めなければならない、しかし頭の中で声が勝手にリピートされて体が動きそうにない。その間にも落下物は止まず部屋に散らばっていく。
 少し高いあの声で、いつもの調子で生意気そうに。10代の生娘じゃあるまいし、何をそんな動揺する事があろうか。……たかが名前を呼ばれたくらいで。しかし目の前にボトリとプリンが落ちてきた、ついにナマ物だ。器に入っていなかったせいで憐れにもぐしゃりと潰れている、できれば口に落ちてきてもらいたかった。このままではケーキも落ちてきそうで、それだけは阻止したい。記憶にこびりつく声を振り払うように、ユーリは無心で頭を振った。

 頭から声が消えれば、ふぅと落ち着く。とにかく片付けるのが先だ、と散らばる花を集め出した。シーツの一枚を敷いてそれに集めて纏めて括るか、そう考えてシワだらけになっていた手近な一枚を手に取る。置いてあった雑巾で床のプリンを拭い、シーツを床に敷く。しかしその途中ユーリは気付いてしまった。このシーツ、二人で傘代わりにした一枚だ。途端に浮かんだのは伸し掛かる体温、腕に触れる朱色の髪。

 その瞬間べちゃり、頭上にベリータルトが降ってきて直撃した。スイーツは好物だが頭から被りたい物好きは居ないだろう、ユーリはやり場のない怒りに打ちひしがれたのだった。





 ユーリ・ローウェルには秘密がある。どこからともなく勝手に物が落ちてくるというはた迷惑な能力は、久方ぶりに発出して大いに困らせた。今の所花と菓子だけで済んでいるが、幼い頃の規模を思い出せばいずれもっと大変な事になるだろう。落下物の種類選択もできない上、自分の力では止められないのも問題。
 ユーリ自身何故今更再発したのか、どう降ってくるのか予想がついていない。毎日後ろを振り返って何か落ちていないか確認する作業が憂鬱で仕方なかったのだが、頼りになりそうでならないだろう協力を勝手に取り付けられた今、多少は気が楽になったのかもしれない。そう思えばまたまたぽとぽとと花が降ってくる、片付けている最中は止めてもらいたい。

「ま、分かんねー事を愚痴っても仕方ないか」

 ただし本当に分からないのかどうかは、本人のみぞ知っている。止まない花を集めてはルークの騒がしいだろう帰りを待った。







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